こんな質問を頂きました。
「なぜ男性は、女性と比べて高い声が苦手なんですか?」
今日はこちらについて少しお話していこうと思います。
にっと
最近の主流はハイトーンの男性ボーカル曲ばかり…辛。
大きな要因は2つ
「男性の方が声が低い問題」
主にこれには、
- 身体面の理由(成長期~の身体的な変化)
- 環境面の理由(生活環境で身に付いた発声)
の2つの理由が関係していると考えられます。
1.身体面での理由
子供の頃は、声の高さに男女差なし
声帯のサイズは
- 長く・太く・重いほど低音が出やすい
- 短く・細く・軽いほど高音が出やすい
と言われています。
このことから、体のサイズがあまり変わらない子供時代は、男女の声帯サイズにも大きな差はなく、声の高さもそこまで差がありません。
成長期(変声期)で声帯が太く長くなる
◆ 男性の体の場合
男性の体は13〜15歳くらいになると成長期を迎え「声変わり(変声期)」を迎えます。
この時期になると、声帯を動かすための喉の中の骨や筋肉たちがどんどん大きく育ち、それに比例して声帯自体も「太く」「長く」なり「低音を作りやすい声帯」へと生まれ変わります。
※(特に男性の場合、今まで引っ込んでいた「のどぼとけ(甲状軟骨)」という骨が前方に飛び出すため、のどぼとけの裏に付いてる声帯も、みょ~んと伸び、成長期を経て声帯は太く長く変化していきます)
◆ 女性の体の場合
実は女性にも「声変わり」は存在します。
しかし、男性の変声期と比べると変化もかなり小さく「本人が気付かないうちに声変わりが終わっていた」というパターンの方もかなり多いです。
にっと
- 成人男性の声帯の長さは約1.5〜2.5cm
- 成人女性の声帯の長さは約1.0〜2.0cm
たった数ミリの差で男女の声の違いは生まれてるのか…
成長にあわせて「喉の使い方」が変わる
成長期を経て体や骨が大きくなると、肺から口へと繋がる「息のトンネル(気道)」のサイズも広く太くなります。
すると、以前よりもたくさんの空気(呼気)がトンネルを流れるため、それまでと同じ声帯の閉じ方では空気の量に耐えきれず、喉の中(声帯など)のバランスが崩壊しやすくなり、声が出しづらくなってきます。
これが、変声期に声がガラついたり裏返ったりしている状態です。
(とくに男性は「のどぼとけ」位置の変異もあり、この症状が顕著)
この時、多くの男性は無意識のうちに喉の中などの「声帯の閉じを助けるパーツ」たちをいくつも追加させ、たくさんの空気の流れにも対抗できる強い閉じを作ることで、安定した喋り声の出し方を覚えていきます。
このようにして、幼少時の高い声から、成年らしい低く太い声へと変化していきます。
(この時期に上手くパーツを追加できなかった人たちは、喋り声が常に裏声っぽくなってしまったり、筋肉の緊張させすぎによって声が常に震えてしまう「変声障害(声変わり障害)」になってしまう事があります)
にっと
体が大きくなるのに合わせ、なるべくして声は低くなったんだね!
しかしその代償に、パーツを追加して重くなった喉は今までよりも高い声が出し辛くなります。
でも、大人になっても高音を出せる男性が居るのはなぜなのでしょう?
大人になっても高音を出せる男性
子供の頃の声帯についての章でも話したように、声帯は「軽い」ほど高音が出やすいです。
変声期を経て、パーツをたくさん追加しながら声を出すクセが付いた男性は「重量オーバー」のまま高い声に挑もうとする場合が多いです。
その結果、喉のバランスが破綻&崩壊し、声が裏返ったり詰まって割れたりします。
逆に高音も出せる男性は「パーツの足し具合(重りのオン・オフ)」を上手にコントロール(重すぎず、軽すぎず、の適切なパーツの乗せ具合)できるので、無理せず高音が出せるのです。
にっと
そんなの知らなかった!ズルイぞ!!
2.環境面での理由
所属するグループによって喉が変わる。
人は、良くも悪くも「空気を読む力」を持っており、この力は声の出し方にも大きな影響を与えています。
例を上げると「親密なグループ内(親、兄弟姉妹、友人同士など)」で長期間過ごすことで、グループ内の「平均」となる声のトーンや喋りのテンポを保とうと、自分の話し方や声の出し方も変わっていきます。
(好意を持つ相手の動きを無意識に真似してしまう、心理学の「ミラー効果(カメレオン効果)」と近いものがあるのかもしれません)
◆ 自分の声が「低音寄り」になりやすいグループ
親密な相手(達)が、
→ 野太くバリバリと割れるような声である
→ あまり声を張らず、低めの声でボソボソと喋る
→ グループがほぼ男性だけで構成されている
など
◆ 自分の声が「高音寄り」になりやすいグループ
親密な相手(達)が、
→キンキンした甲高い声である
→いつもハイテンションで叫んだり笑ったりしてる
→ グループがほぼ女性だけで構成されている
など
小さな頃から姉妹や母親と仲の良い男性は、声のトーンを合わせるべくパーツを減らし気味で喋る習慣がついて、高い声が出やすい人もいる。
にっと
この習性は年齢が若いうちほど影響も顕著に現れ、大人になるほど影響されづらくなる傾向にある。※個人差有
社会的な「らしさ」を求められ、声が変わる
- 上司らしく、先輩らしく、父親らしく
- 男らしく、女らしく
- 大人らしく、子供らしく
強く高圧的な重たい声から、優しくささやくような軽やかな声まで
職業・役職・立場などによって「社会(まわりの人たち)に求められる声」というものは様々に変化します。
場面にあわせて自由に声色を使い分けることが出来る人もいれば、そのまま癖づいてしまい普段からその声になってしまう人もいるのです。
にっと
お母さんが電話取る時、だいたいよそいき声
まとめ
質問「なぜ男性は、女性と比べて高い声が苦手なんですか?」
- 男性は変声期(成長期)を境に「野太く低い声を作りやすい喉」へと成長するから(身体面での理由
- 自身を取り巻く環境にあわせて、喉の使い方や声のトーンなどを順応させていくから(環境面での理由
身体的な理由により、男性の方が声は低くなりやすいです。
しかし「環境によって定着した出し方のクセ」であればボイトレなどでも改善できるため、その範囲内であれば音域を広げていくことも可能です。
にっと
日々の積み重ねで声は出来ている!
声は「生活習慣病」なのかもね。